旅の空色


やすらぎ


 宮城県南三陸町歌津(うたつ)にある民宿。
伊里前湾の西隣にある小さな漁港、寄木漁港の入り江の高台にある。
東日本大震災の大津波で歌津地区の家屋の90%以上が被災する中で、
海のすぐ側にありながらも被害を免れた数少ない奇跡の家屋。
親子三代、まるで親戚のような気兼ねない接客の宿。

宿ホームページ→(外部リンク)http://team-yasuragi.com/

[筆者評]
 息子との親子二人旅に友人Kを加えて3人で宿泊。
釣り船を出せる宿の条件で友人Kが予約した。
大人ひとり一泊二食付き8000円。子供は5600円。
宿泊翌日に宿の船を貸し切りでレンタル。
3時間(うち沖での釣り2時間)、竿3本エサ付きで15000円。
値段はすべて消費税込み。

家族の住む母屋の並び奥に真新しい客室棟がある。
部屋は畳部屋にテレビと押し入れがあるだけ
といったシンプルな構造。
客が空いていれば一部屋を居間として
別に貸してくれる場合がある。
共同施設として洗面台2台に清潔な洋式トイレ2つ、
それと内風呂がひとつある。
風呂は大きめのユニットバスで
湯船も大きく、大人二人でもゆうゆうと入れる。
ジェットバス機能も付いているこだわりもあり。
(風呂好きの私は、この手の共同利用には
いつも違和感があるのだが、
この宿の風呂はとても清潔で使い勝手がよく、好印象であった)

夕食は母屋の大広間でのお膳となる。
旬の刺身に、宮城の名産・ほやの酢漬け、
蛸ぬたなど魚介類を中心とした
心づくしの家庭料理で質・量ともに適度である。
民宿らしく値段の割には満足のゆく食事内容だ。

まあ基本民宿なので、経営者家族の生活の隅を
間借りする感じで、設備など大きく期待するものではないだろう。
この宿の最大の魅力は、最初に紹介したように
気兼ねない親戚のような接客と、
目の前にある海という自然だろう。
常に吹き抜けるやさしい海風と、
体に染み込む心地よい潮の香りは
都会人には何よりの癒やしとなる。

宿には贅沢を求める私がこの手の宿に泊まるのは希だが、
もう一度訪れたい、また海釣りをしたいと思った宿であった。
私にはお代以上の価値がある宿に思えた。

(良い印象)
◇民宿としては料金は標準と思うが、
 もろもろを勘定すると、私には安めに思えた。
◇客室棟は真新しく、清潔感がある。
◇浴室も広く、楽しく入浴できた(定員は2人だろう)。
◇朝晩の食事は質・量ともに満足だった。
◇気さくな接客にくつろげた。
(悪い印象)
◆たぶん初めて行くと道に迷う。
 早く崖崩れを直してくれないと何かと不便だ。

息子は、とりわけ施設がないので、飽きるかなと心配したが、
たまたまご家族の4才くらいの息子さんと
花火遊びで意気投合して、いい思い出となったようだった。
また海釣りの時も、船頭さん(若旦那)によく面倒を見てもらって、
成果は一匹だが魚も釣れて大満足だった。
一人っ子の息子には、小さい子の面倒をみることや、
知らない人の世話になることで
きっといい勉強になっただろう。

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今回の息子との二人旅は、海の日を絡めて一泊二日の旅だった。

いつも通り朝一番の大宮発の新幹線に乗車。

これまたいつも通り
宮城の友人Kの家でタマとじゃれ合ったり、
カエルやドジョウ取りをしたり、プールに入ったりした後、
夕方に車で1時間ほどの南三陸町歌津の民宿に向かった。

寄木漁港の対岸から民宿「やすらぎ」を望む。
中央に白いテントの建つ日本家屋があるが、
その裏手の一段高いところのあるのが「やすらぎ」である。
大津波は白いテントの建つ日本家屋の二階の屋根の下まで浸水させた。
この家は全体的に重い造りだそうで、津波の引き潮でも流されなかったが、
浸水により後日カビが大発生して、住むには耐えられなくなったという。
このような場合、建物にほとんど損傷はないので、地震保険はどうなるのだろうか?

民宿で旅装を解いた後、ちょいと散策に出たら‥、

正に間一髪!目の前で漁港の中央部が崖崩れを起こし道が塞がれた。
大津波の後遺症と、前日の長雨で土壌が緩んでいたらしい。
これにより翌日、釣り船まで1分で行けるところを、
ぐるっと大回りの回り道を15分ほどしなければならなくなった。
また倒れた電線の応急手当のため、
夜の夕食時1時間ほど近隣が停電となった。

息子・錬と友人K。漁港で石投げ(水切り)で遊ぶ。

翌日、天気にも恵まれ、元気よく海釣りに出港。
一応三人とも酔い止めの薬は飲んだ。
船は息子の頭の左に浮かぶ小舟。

漁場は意外に沖に出た。
船は止まると、水平線が見えなくなる波にさらされてよく揺れた。
酔い止めを飲んでおいて本当によかった
(私はそれでも少し気持ち悪くなった)。
水深40〜50mにエサを海底まで降ろして魚を誘った。
2時間の釣りバトルの結果、
私と息子は中型のアイナメを一匹ずつ、
釣り好きの友人Kはアイナメの大物1匹と中型6匹ほど釣り上げた。
この日は潮の流れが早く、魚の食い付きは悪かったが、
それでも三人には満足のゆく釣りで、いい思い出になった。
息子は本当の魚釣りはゲームのようには甘くないことを学んだ。
最後に竿を上げた時、私の針にヒトデが付いてきたので、
息子との釣り勝負は私の勝ちとした。

息子が右手に持っているくらいのだいたいこの大きさ。
後ろがチャーターした船。
息子はエサのアオイソメ(ミミズのようなやつ)が気持ち悪くて触れず、
船頭の若旦那さんがよく面倒を見てくれた。

去り際、民宿の女将さんと若旦那さんと記念撮影。

おまけに息子のマドラスショット。