旅の空色
下田 大和館 やまとかん
伊豆・下田市街よりひとつ岬を隔てた多々戸浜(たたど)にある
南国リゾート風、階段状建築のシーサイドホテル。
宿ホームページ→(外部リンク)http://www.shimoda-yamatokan.co.jp/
[筆者評]
夏の家族旅行で利用。
宿で一番人気の客室、
露天風呂付き客室206号を狙ったが、
半年前の予約でも取れず、
仕方なく隣室の205号、204号の2部屋を利用。
大人5人、子供2人で振り分ける。
しかしこの両部屋ともにとてもよい造りであった。
大人一人一泊3万7千円。
この宿を選んだ一番の理由は
部屋から海岸の様子が一望できることである。
実はこの年の家族旅行は記念すべき年であった。
前年の5月、母は脳梗塞に倒れ、
症状は重症で、当初は動けなくなるとも思われたのだが、
高度なリハビリと母本人の努力の甲斐あって、
なんとか1本杖で歩けるまでに回復した。
旅行の好きな、とりわけ海の大好きな母に
孫たちが浜辺で遊ぶ姿を部屋から見えるようにと
選んだ宿がこの大和館だったのだ。
母復帰の旅行、親子孫三世代旅行時代の
後編の始まりの年となった。
この宿の最大の特徴は、最初に紹介した階段状建築である。
ゆるやかな崖の斜面に、階段状に波状に各階が配され、
真ん中の連絡用の一本階段で繋がれているといった構造で、
屋根瓦が波状に重なる光景は、
正にどこぞの南の島の洒落たホテルといった光景である。
階段を下りれば、ホテルのプールに、さらにきれいな浜に降り、
また階段を昇れば展望大浴場へ上るといった、
ある意味階段づくしの宿とも言えるかもしれない。
(そういった点では、体の不自由な母には
ちょっと不利な構造でもあった。
この構造の場合、エレベーターの繋ぎは悪くなる)
部屋は自然の財産たる多々戸浜の海の展望を
一番に大事にすることを主にしている造りと言っていい。
部屋付きの露天風呂やテラスはもちろん、
広縁や内風呂も海に近い前面に出されていて、
奥に和室10畳と手洗いに化粧台を配している。
デッキチェアーのある広めのテラスに、
大人2人はゆうゆう入れる石造りの露天風呂、
そのすぐ後ろに内風呂があり、
湯船から湯船へ出入りし易くなっている。
広縁も日を避けながらも、
海風を一杯に受けられる広さに
テーブルとチェアーのセットが置かれている。
逆に和室10畳間は手狭に感じられて、
大人3人までがベストの環境かもしれない。
(家族3人で和室に敷き布団で寝たが、
まあ3人分で一杯一杯かなあ。
4人目はきつめに感じるかも)
食事はおお人数(7人)だったので
小宴会場を利用。
伊勢エビの刺身や、アワビの躍り食い、
金目鯛の煮付けといった
ご当地高級食材のオンパレードといった感じで、
まあ値段も値段なので妥当なところか。
名物料理のような、この宿ならではのものが
なかったのが残念だった。
まあ、繁忙期は特に海沿いの宿は
あまり手を掛けない傾向にあるかも。
(基本は部屋食かダイニングでの磯料理コースで、
炭火焼きコーナーでの磯焼プランもあるようだ)。
大浴場は‥、一本階段を4階まで昇り、
さらに3階分くらいの階段を昇ったところにあり、
行きは辛く、大変なので、
特に忘れ物をしないように注意した方が良い。
建物の各階同様に横に細長い造りとなっていて、
海側は全面ガラス張りで、海岸を眺めながら
湯船に浸かることができる。
ただ湯船がちょっとハイカラというか、
プールみたいな感じの造りなので、
純和風を好む私にはちょっと違和感があった。
外風呂にあるジャグジーやヨット型の風呂は
お風呂用おもちゃもあって
特に子供に好評なようだ。
この大浴場から裏手の扉を出て、
さらに3階分ほど階段を昇ったところに、
展望岩風呂がある。
天気さえよければ、多々戸浜を上から一望でき、
また遠く水平線まで見渡せる絶景の風呂なので、
大浴場の中では一番のおすすめ風呂である。
(この時小学2年生だった息子・錬は
風呂の淵に仁王立ちになって海風を受けながら、
夕方の未だ海水浴客で賑やかな浜を
我が征服世界を望むように見下ろしていた。
こちらから見えるということは、
あちらからも見えるということ。
私と従兄弟のたっくんは錬のその勇ましい姿を見ながら、
あんな自信はないなと、岩の影で縮こまっていた)
(良い印象)
◇目の前の多々戸浜はきれいな砂浜で、波の高さもほどよくある。
◇その浜を望む部屋は、南国ムード満点だ。
(岬と岬に海が切り取られて、隔絶した世界に感じる。
夜も星空を遮る光がなく、満天の星の世界となる)
◇下田市街からひとつトンネルをくぐっただけで、交通の便も良い。
(悪い印象)
◆階段構造は素敵だが、移動が少し大変。
◆一部の部屋は前時代的に狭い。
◆テラスや広縁に余裕を持たせた分、
中の部屋は狭めに感じる。
広めの部屋と言っても和室部16畳ほどだ。
息子・錬は小振りなプールながらも飽きずに遊んでいた。
多々戸浜の比較的高い波に海好きの従兄弟・たっくんは
大喜びだった。この浜はまた来たいと言っていた。
多々戸浜については平成21年8月のコラムで紹介しているので
参照ください(コラムは後日掲載予定)。
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波間で遊ぶ従兄弟のたっくん(黄色)と息子・錬くん(赤)。
(おまけ)いつも寝付きは良い方だが、この時はさすがに泥のように寝ていた。