旅の空色


今までで一番最悪だった宿


批判記事なので宿の名は秘匿としておく。
関東の有名な温泉地にある或る宿の話である。

まず案内された部屋に入った時から違った。
足で部屋の畳を踏んだ途端、畳が少し沈むのである。
これは明らかに床下が著しく痛んでいるためと分かった。
とても落ち着いて部屋でくつろぐといった
雰囲気ではなかった。

また大浴場の湯に浸かった時もである。
全くお湯の効用を感じないのだ。
さらっとして、パリッとして‥、
後で確認すると真水であった。
つまりは家の風呂と変わりないのだ。
加えて大浴場をよくよく見回すと
壁板に大きな大穴が空いていて、
基礎のコンクリートが剥き出しに見えていた。
最初は模様の一種かと思ったが、
なぜこんな大穴が空いているのか、
その理由までは聞けなかった。

食事も最悪であった。
そこら辺のロードサイドの和食レストランの食事が
まぶしく感じる程の貧相さであった。
ぼそっとしたお膳料理だった。
食欲の湧くものなど無かった。

私は幹事に「この宿、私が個人的に来たなら
お金投げてすぐ帰りますよ」と抗議した。
ただある事情があるためのこの有様と
わかってもいたので、半分冗談交じりの
抗議でもあった。

そのある事情とは‥、
宴会時に出張コンパニオンを呼べる条件のある
宿だったためである。
まあ、ただ若い女性たちと賑やかに飲みたかったのだ。
しかしその代償も大きかった。
この時以来、仲間内では
コンパニオン優先は懲りて
宿の質を優先するようになった。

ところでこんな宿に泊まる輩は他にいるのかと、
翌朝朝食会場で周りを見回すと‥、
結構いたいた、いい歳の夫婦もの数組と
学生の合宿利用があった。
夫婦ものはこの宿では上級レベルの
石焼き懐石プランあたりの利用だろうか?
学生は団体での利用料金が魅力だからだろう。
まあ昔私が学生だった頃も
似たり寄ったりの宿を利用していたかと思うと
彼ら学生の和気あいあいとした
楽しそうな姿も微笑ましく見えた。

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