旅の空色


星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳


 イタリアの世界的建築家、マリオ・ベリーニが手掛けた
独特の世界を演出するデザイン・ホテル。
元々は大阪の小売りグループ・マイカルの一事業だったが、
2001年に事業縮小の一環で星野リゾートに売却。
星野リゾートとしては買収再生事業の記念すべき第一号で、
大成功例となり、この手の経営スタイルを確立する。

土地や建物の初期投資が少ない分、
良質の設備ながら、比較的安くサービス提供できる。
人件費やその他サービスもある程度品質を保ちながらも
合理性を追求していて、シンプルさが基本である。

宿ホームページ→(外部リンク)http://www.risonare.com/index.html

[筆者評]
 この年はあの東日本大震災の年であった。
しかもこのホテルを訪問したのは同じ3月。
当初は春休みの旅行として、嫁を実家の仙台に送りながら寄ろうと
同じ星野リゾートの「裏磐梯ホテル」を予約していた。
しかし大震災後は交通が分断し、ほぼ行けなくなった。
また大惨事を目の前にして、自粛自粛の大合唱となり、
我が家も一時その声に埋もれた。
だがやがて今度は観光地の悲鳴が聞こえてきた。
とりわけ東日本地域は閑古鳥すら鳴かない状態だった。
惨状がまた惨状を生む。
私はその悪循環に気付かされ、そして旅行を愛する者として
あえてこの時期に旅行をすることを家族に告げた。
(「星野リゾート 裏磐梯ホテル」→(外部リンク)http://www.urabandaihotel.jp/

「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」は
星野ホテルグループの中でも
とりわけ人気のホテルであり、
通常なら直近では、ましてや春休みを引っかけては
取りにくいホテルであるが、
世の中の事情が事情だけに、
一週間前でも部屋は選び放題であった。
67uの「テラス・スイート」を利用し
大人一泊二食付き1万6千円程であった。

このホテルの特徴は大きく2つ。
ひとつはデザインホテルの独特の雰囲気。
もうひとつは波の出るプールを南国の海岸に見立てた
大型室内温水プールである。

建物は「〒」文字型に建っていて、
(正確に言えば椎茸みたいな形かも)
横二線の部分は、エントランスホールにレストラン、
プールに結婚式場とサービス施設が集中し、
棟の上階はホテルルームになっている。
縦は「ピーマン通り」と呼ぶ煉瓦路を軸に
ちょっとしたショッピング街になっていて、
10店ほど売店や飲食のテナントが入っている。
このゾーンは一般の流れ客(宿泊者以外)にも
基本開放されていて
人出の多い時期にはカラフルなテントを並べた
ちょっとした市が立ち、
ヨーロッパの露天マーケットのような
雰囲気になるらしい。
テナント棟の上階には様々なタイプの
デザインスイートルームが並んでいる。
各部屋にはトマト通り沿いから
階段を昇って入る形で、
洒落たアパートメントのような、
他にはない特徴的な造りになっている。
宿泊者というよりは、店舗上の住む
住民といった感じだ。

食事はレストランでの半コース半バイキング料理。
メインディッシュを選択できて、
コース料理の雰囲気を出しつつも、
サラダやデザート、総菜、飲み物は
バイキングでチョイスといった具合だ。
バイキング部分で腹一杯食べれるので、
達成感はあるが、
メインディッシュの品質云々を勘定すると、
まあ安めの宿泊費並のサービスでは
ないだろうか。
別注のワインも地産ものを意識しつつも
3種類の選択肢しかなく、
値段は手頃だが、
ワイン通には不満ありと思う。
ホテル内のミニコンビニには地場ワインが
そこそこ揃っているのに、
レストランでのこのサービスのギャップが
理解し難かった。
まあ、ある程度の合理性を追求する、
シンプルなサービスの象徴のひとつかもしれない。

室内プールは大きく、遊び甲斐がある。
扇状の波のプールも波打ち際が
砂のような特殊なコンクリート打ちで
本当の砂浜みたいだ。
ただ波の出現回数が少なく、
せっかくのいい雰囲気ながらも
間延びしてそこが残念だった。
またプール内のシャワー設備など
部分部分ほころびが見えて、
且ついかにも放りっぱなしで、
ホテルのサービスの天井が見える。

風呂は基本、部屋付のバスとなるが、
敷地の外れに小さいながらも
「もくもく湯」なる浴場がある。
温泉ではないようだ。
内風呂に加え、外湯があり、
外湯の湯船は混浴となっている。
男女気兼ねなく入れるように、
また家族で楽しめるようにと
外湯用の入浴着が用意されていて面白い。

その他にも周りの自然を利用した
子供向け、家族向けプランが
季節に応じていろいろと用意されていて
ホテルはサービスに知恵を絞っている。

(良い印象)
◇施設の立派さに比べ料金が安め
◇そこかしこが絵になるような世界を演出している。
◇大型プールの存在は大きい。
◇部屋のパターンが幾通りもあり、毎回違った雰囲気を楽しめる。
(悪い印象)
◆サービスの対応幅が限られている。
◆夕食後はすることがなくなる。
 (カラオケなど遊技場がない)

総合的にはちまたの評価通り「優良」なホテルと思うが、
料理とサービスは一流とは言えない、
っていうかホテル側もそういう路線ではないのだろう。

息子はプールで遊べて大満足だった。
また跳んではねて遊べる部屋にある「ごろごろマットエリア」は
息子にとって(たぶん多くの子供にとって)
お気に入りの場所だった。
(寝床とリラックスシートを兼ねた大型マットを敷いたエリア)

(注意)上記の感想は2011年3月宿泊時のものであり
    現在はホテル側の路線変更などで
    サービス内容は変わっているかもしれない。
    施設の大きさといい、部屋の多彩さといい
    懐の大きい環境なので、いかようにも変われる
    資質があると私は思った。
    元はバブルの時に建てたんだろうなあ。

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プールにて。息子・錬。

ピーマン通りと息子・錬。
まあ、さすがに大震災後すぐとあって
宿泊者は少なく、通りは常に閑散としていた。