旅の空色
2010年11月号
REN LOVE 自転車
子育ての極意として「子供は褒めて育てよ」と聞いたことがある。彼の山本五十六連合艦隊
司令長官も人の育て方の極意を「やってみせ 言って聞かせて させてみて 褒めてやらねば
人は動かじ」と手間を掛けて、なお且つアフターフォローも大事と説いている。いずれの
極意も『褒める』ことが味噌であるようだ。私も全く同感である。とりわけ褒められた時の
子供の返すうれしそうな笑顔は最高によい顔のひとつだ。褒めることが子供の心の栄養となり、
ますます善行に励むようになれば教育の極みであろう。しかし現実には…なんと怒ることの
多いことだろう。時に子供は1日中怒られていることもある。子供のいたずらが過ぎるのか、
親の期待が大きいのか、はたまた指導の仕方が悪いのか、その根本の原因は何ともわからないが、
子供は怒られるのが、親は怒るのが仕事といった風が我が家の現実である。
そんな残念なことが目立つ我が家であるが、先日息子・れんくん(7才)の自転車のことで
とても関心したことがあった。れんくんは自転車が大好きで、よく店の裏手の道で行ったり
来たりして楽しんでいる。もちろん補助輪はとうに外れていて人並みに上手に乗りこなす。
しかしまだ小学2年生なので学校の方針(=親が同伴する時以外は市道で乗らない)に従って
車のほとんど来ない裏道以外では自由にさせていないのだ。ところでれんくんのその愛用の
自転車は親や祖父母が買って与えたものではなく、れんくんのライバル、従兄弟のたっくん
(11才)のお下がりである。車輪18インチのモトクロス風のしっかりした作りの自転車で、
補助輪の付いていた頃より愛用していて、腕前はその自転車とともに育ってきた。
しかしいくら丈夫な作りと言ってもお下がりになってからさらに5年ほど経過しているだろうか、
さすがにボロが目立つようになってきている。最大のボロはペダルの片方が軸の鉄棒のみを
残して踏み板がなくなっていることだ。しかも残されたもう一方のペダルも
踏み板が半分割れ落ちて、ふたつのペダルともに軸だけになるのは時間の問題という状態である。
そんなボロながらもれんくんは器用に軸だけでこいで乗りこなしている。モノの豊かな時代、
そのような自転車に乗っている子供はまず見かけないので、私は昭和の子だと笑って
からかっている。そーいえばサーカス団は確か軸だけのペダルの自転車に乗っているので、
見方によってはこれもあり?かもしれない。そんな自転車でもよいところもある。それは決して
盗まれないことだ。ママとの買い物に毎度その自転車に乗ってついて行くが、鍵がなくても
盗まれる心配はまずない。逆に処分する手間が省けるので、毎回誰か持って行ってくれないかなー
と密かに期待していたりする。しかしさすがにれんくんも新しい自転車をほしくなってきている
ので、近々新しいモノを買ってあげようと嫁さんと相談もしている。
そんなある日の夕方、大好きなテレビを見ていたれんくんが外で雨が降り始めたことに気付いて
慌てて靴を履き始めたことがあった。天気が悪いのにどこに行くのかと聞くと自転車を表に出した
ままなので仕舞って来るという。私は後ろからそっとついて行って様子をのぞくと雨の強く降る
中を雨避けの気休めに背中を丸めたれんくんが一生懸命に自転車をひさしの下に片付けていた。
雨ごときに濡れてもどうでもいいようなボロなのにと私は思っていたが、どうやられんくんに
とってはそのボロが大切な宝物であることに気付いた時、自分の気持ちが恥ずかしくなり、
同時にれんくんが自転車をとても大切にしている気持ちに胸が熱くなってきた。
「そんなにその自転車が好きなの?」と彼に聞くと「うん!」と力強い返事が返ってきた。
「モノを大切にすることはとてもいいことだよ。えらいよ」
久しぶりに我が息子に心から感心し褒めた瞬間だった。
ごく最近になってれんくんは22インチ大のモトクロスタイプの自転車を乗り始めた。
しかしそれは新しく買ってあげたものではない。またまた従兄弟のたっくんのお下がりである。
なんかお下がりばかりでかわいそうな気もするが、当の本人・れんくんはとても満足している。
どうも真っ新な新車だとか、たくさんのギアやかっこいい小物が付いているほうがよいという
こだわりは持ち合わせていないらしい。今の大きさの運転に慣れたら新車を買ってあげようと
考えているが、また同時にれんくんが自分で新しいモノがほしいと言うまで待ってみたい
気持ちもある。ちなみにあのボロも未だに併用して愛用している。
サイクリング島
11月のある月曜日、先の土曜日に行われた授業参観の代休でれんくんの小学校は臨時休校と
なった(この授業参観での彼の態度も関心できるものではなくひと悶着あったのだが、それは
置いておくとする)。当店は月曜日定休となかなか子供と出掛ける都合が合わないので、
そんな月曜日は貴重な機会となる。嫁さんはれんくんの大好きな新橋のポケモンセンターに
連れて行こうと考えていたようだが、天気がとてもよかったので予め私が下調べしていた
れんくんの大好きな自転車を思いっ切りこげるところに家族3人で行くことに決めた。
その場所とは埼玉県東松山にある「国定武蔵丘陵森林公園」である。草加ICより外環道を
大泉に走り、大泉JCTから関越道を下ること約1時間、東松山ICを下りておよそ10分の
ところにその広い公園はある(電車では東武東上線「森林公園駅」より約4km離れていて
路線バス利用が便利である。JR武蔵野線「北朝霞駅」で東武東上線乗り換えとなる)。
全長約6km、幅1km超、ちょうど沖縄本島のような形をしたその公園は名前の通り
なだらかな丘陵と複雑な地形を持った陸の孤島のような場所である。東西南北4カ所に公園への
入り口があり、各入り口ではレンタル自転車が用意されていて、手ぶらで行っても気軽に
サイクリングを楽しむことができる(もちろん自分の愛車の持ち込みもOK)。
公園内をぐるりと一周するよく整備された自転車専用道路はおよそ17kmもあるそうで
たっぷりと楽しめる長さである(ちなみに17kmというと直線距離で越谷市蒲生から
上野駅くらいまでの距離である)。以前行ったことのある東京立川市の昭和記念公園も
自転車道がとても整備されていて気持ちのよい作りとなっていたが、今回初めて訪れた
この森林公園の特徴はその野趣溢れる環境と言えるだろう。なるべく自然に手を加えない形で
公園が整備されていて鬱蒼たる森の中を走る時はまさにマイナスイオンに満ちた世界である。
狸やリスなど小動物もたくさん暮らしているそうで、サイクリングの途中、道の脇の草むらで
それらしき影に出会った(ただスズメバチなどの危険生物もいるようで警告の看板があった)。
また丘陵なのでゆるやかながらも道にはけっこう起伏があり、かなり運動になるサイクリングでも
ある。公園のところどころにはいろいろな子供の遊び場もあり、サイクリングの途中途中で
様々な体験もできる。息子・れんくんには自転車に遊びにと目一杯楽しむことができ
大満足の1日となった。そしてもちろん最後には長いサイクリングコースを自らの力で
完走したれんくんを褒めてあげることもできた。
■ 執筆後記 ■
関東地方に3つある国が管理する国営公園のひとつ
「国営武蔵野丘陵森林公園」(埼玉県滑川町)の敷地には
紹介した長大なサイクリングコースを始め、
大きな水遊び場、広大な芝生公園、充実したアスレチック、
数々の子供用遊具(低年齢向き)、
レストラン、バーベキューコーナーなどなど
休日に家族で楽しく過ごすアイテムが揃っている。
ただ敷地が広いため、目的によって駐車場や
遊びたい内容を予め下調べしておいたほうがいいだろう。
その点サイクリングなら気軽に移動できる利点がある。
公園HP→http://www.shinrin-koen.go.jp/
関東の他の国定公園と違うのは
何と言っても豊かな緑の自然があることだろう。
その分野性味も濃く、狸や蛇もめずらしくないようだ。
ヤブ蚊や蜂の類いもいるので、それらへの対策も
一応用意しておいたほうがいいだろう。
そこら辺は自己責任のうちだと思う。
ちなみに関東の他の国営公園は下記の通り。
★「国営昭和記念公園」(東京都立川市)
立川駅より500m北にあり、交通の便が良い。
戦後駐屯した米軍の立川基地跡を整地して作られた
巨大な公園である。
公園HP→http://www.showakinen-koen.jp/
★「国営ひたち海浜公園」(茨城県ひたちなか市)
太平洋を望むシーサイド公園。
南に6kmのところに鮮魚市場で有名な那珂湊(なかみなと)や
大洗海水浴場がある。
遊園地エリアを有するのも特徴。
公園HP→http://hitachikaihin.jp/
サイクリング専用道路はこんな感じ。
ドングリ拾いに勤しむ息子と嫁。
アスレチックも充実している。
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