旅の空色
2010年 7月号
今年の夏のおすすめ映画
先日妹の子・たっくん(10才)と我が子・れんくん(7才)を連れて3人で映画を
観に行った。私自身が大の映画好きということもあり、彼らの好きそうな、またために
なりそうな映画がある時は私からふたりを誘うのが常である。今回もこの夏家族で観るのに
一番との評が高い映画「トイストーリー3」とあって、子供たちにはもちろん異存はなかった。
映画の内容は童謡「おもちのちゃちゃちゃ」のような世界観で、おもちゃにもそれぞれ魂があり、
人間の知らないところでおもちゃなりに日々奮闘しているといった話である。
今回のタイトルに「3」とあるようにシリーズ3作目となる作品だが、実はこのシリーズの
1作目はたっくんと古い関わりがあったのだ。およそ10年前、1才になったたっくんは
妹の仕事の都合で日々託児所に預けられていて、度々私が妹の代わりに迎えに行き、我が家で
よく預かっていた。その時たっくんが観ていた大のお気に入りのビデオが『トイストーリー』の
1作目であった。たっくんは周りが呆れるくらい、毎日毎日そのビデオを観ていたのだが、
やがてビデオの見過ぎでトイストーリーの世界の住民となってしまい、仕舞いには託児所の先生に
トイストーリーを見せないよう注意されてしまったのだった。今となっては笑い話だが、
当時はよかれと思ってさせていたことがたっくんの育成に大きな影響を与えたようで
ひやりとした体験であった。そんな昔話を当のたっくんに聞かせたが、本人はまるで
覚えていないようでどうやら後遺症は残らずに済んだようだ。1作目より10年の歳月を経ての
3作目ということで、本場アメリカでは1作目の当時小学生だった今の大学生を対象に
映画の宣伝を打って成功を収めたとの報道があったが、今回改めてたっくんに観せることで
昔の影響が残ってないか私なりに確かめたい気持ちも内心あったのだった。
ディズニー映画に属するトイストーリーは子供向けのCGアニメとはいえ1作目も2作目も
そして最新の3作目も大人も見応えのあるよくできた映画である。特に今回の作品では
最後の方でおもちゃたちがいよいよ自分たちの命もこれまでだと覚悟を決めてお互い手を
つなぎ合うシーンは胸をえぐられ目頭が熱くなり、涙を堪えるのがやっとという名シーンで
あった。実はたっくんよりも私の方がこの映画にハマッているのかもしれない
(このシーンで子供たちはどんな顔しているのかと横目で確認するとたっくんも目をうるうる
させていたが、我が子・れんくんはケロッとした顔で意外であった。どうやられんくんは
話の展開にいまひとつついて行けない様子であった。それよりもポケモンの映画で
ゾロアークなるポケモンが死にそうになった時の方が泣きそうになったと言っていたので、
どうも泣きのツボが違うようだ)。
時には失敗もあり
この3人で映画に行く時はその時話題の映画なので毎度楽しく鑑賞してくるが、一度だけ
大失敗した経験がある。その映画の名は『アース』。野生の王国の映画版のような作品で、
弱肉強食の厳しい大自然の中でたくましく時に美しくい生きる野生生物のありのままの姿を
集めたドキュメンタリー映画であった。文部科学省やWHO(世界保健機関)の推奨作という
鳴り物入り作品であり、少しでも子供たちの勉強になればと二人を連れて行った。
しかし…。
ふたを開けてみれば映像が荒く、話のテンポも悪く、開始30分ほどで私自身も鑑賞に
耐えられなくなってきたその時、たっくんに「この映画ハズレだね」と一刀両断されてしまった。
意地もありなんとか最後まで観たが、3人ともにつらい映画の時間となった。
あーあ、映画代ケチったのもいけなかったのかなあ。子供は特別鑑賞料金とやらでひとり500円
だったので、地球にもお財布にもやさしい映画と思ったんだけどなあ
(小憎らしいことに後でたっくんに「あの映画500円だったんだね」と指摘された)。
気がつけば映画天国
幼少より映画好きな私から言わせればたっくんやれんくんを始め今の子供たちの映画環境は
とびきり恵まれていると言える。私の時代は映画館で鑑賞したいならば、浅草や上野、
日比谷や銀座までと子供にとっては未知で危険な都会に出なければならなかったものだ。
やがて浅草や上野の映画館がすたれて、もやは映画館の時代は去ったかと思った時に、
越谷住民にはラッキーなことに三郷(MOVIX=ムービックス)に続き、越谷レイクタウン
(イオンシネマ)にもシネマコンプレックスという新しい映画館のビジネスモデルが登場した。
シネコンと略称されるシネマコンプレックスはひとつの施設内に小分けした大小の映画劇場を有し
各部屋ごとに様々な映画を上映する映画館の複合施設である。昔のテアトル東京や有楽町マリオン
などの巨大スクリーン、大ドルビー音響の大映画館巨砲主義の時代を経験してきた私としては、
シネコン内の100席程度の小劇場は今でも少々抵抗感がある。しかしそれ以上に近場で気軽に
大きなスクリーンで映画を楽しめる今の環境は我が郷里の誇りのひとつとなった。
三郷およびレイクタウンともに同じシネコンであるが、それぞれ特徴があるのでここに私流の
使い勝手を紹介したい。施設の大きさとしては三郷に軍配があがるので、迫力の映像を楽しみたい
場合は三郷にしている。またたっくんやれんくんと映画に行く時も人出の多い週末になるので
やはり三郷にしている。その理由は三郷はあらかじめ数日前に自宅のパソコンでピンポイントで
最高の座席を予約できるからである。あとは当日に専用の発券機で待たずにチケットを受け取れる
から便利だ(シネコンの弱点を指摘すると劇場でのチケットの購入時があげられる。
すべてのチケットをロビーカウンターで一括して取り扱っているため、人気の映画だろうが、
いまひとつのものだろうが、同じ列に並んで買わなければならない。混んでいる時、
しかも上映時間が迫っている時などは不利になる場合がある。しかしそんな時にこそ
ピンポイントで予約しておけば、当日チケットを買い求める長蛇の列を横目に進んで、
優先して最高の席のチケットを労せずに手に入れられるのだ)。三郷ばかりをよく書いたが
実は最近はよくレイクタウンも利用している。一番の理由は料金が安いこと。イオンカードで
決済すると平日終日1000円なのだ(表立って書いてないが1000円しか払ったことがない。
どんな基準でそうなっているかわからないので、一応確認の上ご利用ください。ちなみに三郷は
平日午前中および夜8時以降上映作品が1200円)。
とても身近に最高の席で子供たちと映画が観れるようになりうれしい限りであるが、
問題もひとつ。最近の映画館はフード類も充実していて、子供たちにはポップコーンやら
ホットドックやらと毎回山のように買っては食べながら観るのも楽しみのうちなのだ。
その支出はチケット代並となる。「さっき飯食ったばかりだろうに」と思いながらも、
少しお裾分けしてもらっている私である。
※上記の映画館の割引きサービス等は2010年7月時点のものであり、
近年はサービスが変わっているので注意を要する。
■ 執筆後記 ■
映画館で映画鑑賞というと
私にとって最高の思い出は
何と言ってもジョージ・ルーカスの
「スター・ウォーズ(エピソード4)」である。
スター・ウォーズ シリーズの最初の作品だ。
それも日本での公開日2週間前の先行オールナイトで見た。
当時私は小学6年生で、深夜営業の映画館には
基本入れなかったのだが、
お店を手伝っていたお兄さん達に連れられて
うまいことするするするっと入ったのだった。
確か映画館は銀座一丁目にあった
テアトル東京だったと記憶している。
巨大なスクリーンの前に何基ものドルビーが
床に埋め込まれていて、重低音の振動が
席に伝わってくるといった当代一の映画館だった。
その大迫力の映画館で、
一般の日本人としては初めて
あの巨大宇宙戦艦、スターデストロイヤーが
つんざくような音のレーザー砲を撃ちながら、
重低音のエンジン音を轟かせて、
大画面すれすれにスクリーン画面一杯に
どっしりと進んで行く
あの特殊効果の名場面を見たのである。
「おおおおおっ〜」
会場のお客の多くから
自然と驚きの声が漏れたのを
今でもはっきりと覚えている。
あの夜、あそこにいた観客は
間違いなく新しい世界の入り口に
立っていたのだった。
一緒に行ったお兄さん達も
帰路では早速買った映画音楽のテープを
カーステレオにかけながら
興奮冷めやらぬ口調で
映画について語り合い
賞賛していた。
私も一般公開日までの2週間、
学校で鼻高々で
映画の宣伝をしたものだ。
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